絶対積極について

 絶対積極、と書いて「ぜったいせきぎょく」と読む。

 これは日本に初めてヨーガの教えをもたらした、中村天風さんの中心をなす思想だそうです。たかさんのYouTubeで知りました、はい。

 「ええ⁈ 中村天風ってヨーガの人だったの‼︎」と僕は驚いた。

 名前はなんとなく知っている。でも僕の持っていた印象は、新宗教の教祖とか自己啓発創始者とかの、少し胡散臭いものだった。

 今、胸に手をおいて思い返すと、なぜ中村天風の印象が胡散臭かったかというと、僕が胡散臭かったからだ。その名前を初めて聞いた時の僕が、胡散臭かったのだ。

 まあ、今でも胡散臭いじゃないかと言われれば、それまでなんだけど。

 中村天風さんの名前を初めて聞いたのは、1990年のことだったと思う。僕は21歳前後のハナタレ小僧だった。

 これは僕の長い間の恥じであり恥辱であり秘密であり、今思い返しても「慚愧にたえない」ことなんだけど、まあ事実なんだからしょうがない。

 当時の僕は、とあるカルト宗教の信者だったのだ(ああ恥ずかしい)。

 カルトと言ってもオーム真理教じゃないですよ。そこはぎりぎりセーフです。

 でも同世代の出来たてほやほやの宗教で、この間教祖が60代の若さで亡くなった教団です。

 あれ? あれってカルトだったっけ、と思った方もいるかもしれない。

 僕にとってはほとんどすべての宗教はカルトなのです。そして霊能力という便利な言葉を利用して、少しでも嘘をついたら僕の中でバリバリカルト認定です。

 もう本当に恥ずかしいけれど、若気の至りでは済まないけれど、とにかく僕はそこの信者だった。

 そしてバリバリと伝道してたわけです(穴があったら入りたい)。

 で、ある時仕事を通して知り合った年上の女性に伝道した時のこと。僕は熱をこめて教祖の素晴らしさを彼女に説いた。すると彼女は落ち着いた口調で僕にこう言った。

 「中村天風の教えも素晴らしいわよ」

 当時絶賛狂信中の僕は、彼女の言うことは鼻もひっかけなかった。それどころかこう思ったのだ。

 「中村天風? どうせカルト宗教の教祖だろう」嗚呼・・・・・。

 今、僕は心の中で土下座してます。五体投地してます。しかばねのポーズで死んだふりしてます。

 しかしあれだね、人間五十も半ばになると自分の恥じも平気で暴露できるものだね。

 昨日、息子に久しぶりに会ってさ、あいつが言うにはこのブログを彼女に読み聞かせてるんだって。腹抱えて笑ったな、心の中で。絵本じゃないんだから、もう。

 ということは、これも読むんだろうな。

 俺、カルト信者だったってこと、息子にも話してないんだよな。

 まあいいや。

 幸い僕は、その教団をとある事件を起こしてすぐ辞めました。抜け忍第一弾です。いやあ、本当の意味でカルト抜けするのに5・6年はかかったなあ。

 と、いうわけで僕が中村天風に胡散臭い印象を持ってた理由は、僕が胡散臭かったから、が答えでした。納得していただけましたでしょうか。

 あれから33年・・・。

 たかさんのYouTube中村天風さんがヨーガの人だと知った僕は、早速「運命を拓く」を買って読みました。

 素晴らしかった。ヨーガの真髄をわかりやすく日本語に翻訳して、明るく烈しく、武道の達人のように伝えてらっしゃる。

 「絶対積極」とは、なにごとも積極的に受けとめて、感謝と歓喜の人生を活きることです。こう書くとあたりまえに見えて凄味が伝わらないけれど、本当に凄い教えです。ぜひすべての人々に触れてほしいと心から思う、「せきぎょくてき」に。

 だから今僕は、若い頃カルトに引っかかったのは、カルトを学ぶためだったんだな。キリスト教に入信したのは一神教を学ぶためだったんだな。おかげで仏教まで勉強できた。そしてその道のりは、ヨーガへの道だったんだな。少し遠回りだったけど、決して間違ってはいなかったんだな。そういえば、僕が自分で考案した法名は「健風」だった。なんだか天風先生のお弟子さんみたいで嬉しいな。

 と、「絶対積極」的(ぜったいせきぎょくてき)に思っているわけです。