マントラの節回しについて

 去年の11月のはじめ頃からガヤトリー・マントラを108回、毎日唱えている。今のところ継続中である。我ながらすごいなぁ。

 ちなみについこの間まで、覚えているマントラはたった2種類だった。ガヤトリー・マントラとガネーシャマントラだけ。奥さんがラクシュミーの神様カードを買ってきたので、ラクシュミーマントラを覚えたのは先月だったっけ。それもなんだかなぁ。

 去年の夏ぐらいからヨガシャラのたかさんのYouTubeを熱心に見るようになって、「俺もヨガっぽいことやりたいなぁ」と思うようになった。

 たかさんがガヤトリー・マントラ108回唱える動画を見て、これだッと思った僕は、マントラの節回しを研究するために動画を色々と見てみることにした(なぜたかさんを参考にしないのか)。

 検索すると、一番上のほうに来るのがサイババなのね。しかも、数が多い。とりあえず、サイババの節回しを採用した。

 それで、最初のうちはサイババ調だったのだ。

 ひとり部屋にこもり、東を向いて脚を組んで座り、108個玉のついたルドラクシャ・マーラー(数珠)を握り、おずおずと唱えはじめたのだった。

 最初のうちは、よくつっかえたり間違えたりしていた。でも一週間もするとすっかり覚えて間違えなくなった。

 それより辛かったのは脚、それも膝でしたね。

 身体が硬いうえに脚を組み慣れてない僕は、108回唱え終えるとしばらく痛くて立ち上がれなかった。

 あと、ルドラクシャ・マーラーの扱いに慣れなくて、半分くらい唱えたところでうっかり取り落とし、泣く泣く初めからやり直しなんてこともあった。

 でもひと月もすれば慣れてきて、すっかりルーティン化してきた。

 マントラを唱えることを「お勤めする」なんて言うようになった(なんだか舐めてるなぁ)。

 サイババ調の節回しって、荘厳というかシリアスというか、まあ神聖な感じがするのね。だから、唱えてると神聖さを出さなきゃいけないって思っちゃうの。

 だから、きっと深刻な顔して唱えてたと思う。

 ところがある日、奥さんがあるガヤトリー・マントラの動画を発見してしまった。

 その動画は、頭が薄くなりかけたインド人のおっさん中心に、おばさんお姉さんお兄さんそれと子供たちが、集団でガヤトリー・マントラを延々と歌う、というものだった。

 凄かったのはメロディで、なんともお気楽なインド歌謡、という感じで、リズムもスッチャカスッチャカスッチャカと、聴いてると体が揺れてきそうになる。

 「これはなんだか凄いなぁ。これでサイババと同じマントラなんだもんなぁ」

 僕は感心するやら呆れるやら、さすがインドだなぁと無理矢理納得したのだった。

 さて、その日の「お勤め」の時間。

 厳かに座り目を瞑り、口をついて出てきたのは、あのインド歌謡ガヤトリー・マントラだった。

 うわッと僕はひっくり返り、急いでサイババ調を思い出すためにiPhoneのある居間へと走っていった。

 YouTubeサイババマントラを確認してふたたび始めても、スキをついて途中でインド歌謡ガヤトリーが出てきそうになる。

 そのたびにサイババの荘厳な調べを思い出し、なんとか軌道修正して・・・、を繰り返した。

 唱え終わるころには、へとへとに疲れてしまった。

 恐るべし、インド歌謡ガヤトリー。

 それは強力な感染力を持つウィルスのようなものだったのだ。

 それから我が家では、インド歌謡ガヤトリーの動画の再生と歌唱が禁止されたのだった。それは年内いっぱい続いた。

 今はどうかというと、時々クルマを運転しながらインド歌謡ガヤトリーを歌っています。だって、楽しいんだもん。

 なんだか楽しいほうがあってるのかなぁ・・・。