宇宙語について

 スピリチュアルの森の中にいた数年前のこと。

 うちの奥さんが一冊の本を買ってきた。それは「宇宙語」についての本で、日本の女性が書いたものだった。出版元はヒカルランド(今だったら、うわ、ヒカルランドかよ、ってなります。よくも悪くも)。

 「これ、異言のことだと思う」と奥さんは言う。

 読んでみると、なるほど宇宙語とは「キリスト教抜き」の異言のことだ。

 自分でもなに言ってるかわからない、妙な発音の言葉、異言。それをその本では「宇宙語」と呼んでいる。

 「にしても、宇宙語ねぇ」と、僕は思った。

 あまりにも子供じみている、そう感じたからだ。

 その本によると、英語では「ライト・ランゲージ」、つまり光の言葉。無理矢理日本語におさめたら「光語」になるのかな。

 いまいちピンとこないけど、「宇宙語」よりはねぇ。

 まあとにかく、日本のスピリチュアル業界ではこの「宇宙語」を流行らせようとしているらしい。

 宇宙語を話しているのは、自分のハイヤーセルフだったり、ガイドだったりするらしい。時には神社なんかにいる霊的存在も(神様じゃないか)出てくるらしい。

 なんだか翻訳機能が壊れたチャネリングみたいだ。

 しかし、著者は宇宙語を話すのみならず、翻訳もする(まあそうじゃないと本にならないよなぁ)。

 キリスト教にも「異言の解き明かし」というのがある。誰かが話した異言の意味を解き明かす能力、いわば翻訳能力のことだ(僕にはない)。

 そうか、今や異言は宇宙語になっちゃったのか。なんだか威厳がないなぁ、と僕は思った。

 さて、前後関係は忘れたけど、その頃僕の異言を話す存在に名前をつけた。

 「イーライ・カメイ」。より正確に言えば「イーライ(仮名)」である。

 これはどういう由来があるかというと、ゲリー・ボーネルの自伝からパクったのです。

 ゲリー・ボーネルはアカシック・レコードにアクセス出来る人で、日本でもたくさん本を出している。

 その少年時代の自伝「新時代の叡智」の中で、体外離脱をするようになったゲリー少年は、ひとりの霊的存在と出会う。彼はゲリーの「ガイド」で、少年をアカシャ(日本語では虚空蔵)に導いてゆく。

 そのガイドの名が「イーライ」なのだ。

 イーライは、見た目は宇宙人だけど聡明で明るくて、ユーモアに溢れている。ゲリーの本に登場するキャラクターの中で、最も魅力的な存在だと思う。

 僕も奥さんも、この「イーライ」が大好きなのだった。

 ある時、僕の異言を語らせている存在の名前を知りたいと思った僕は、異言を語りながら心の中でこう訊いた。

 「すんません、お願いです。名前を教えてくださいませんか?」

 もちろん答えは返ってこない。ただ異言が続くだけだ。

 いや、本当は答えてくれているのかもしれないけれど、翻訳機が設定されていない僕にはわからない。

 その時、ふと思った。

 「この異言語っている人の雰囲気、イーライに似てるなぁ」

 異言を語っていると、心持ちが少し変化する。僕の場合、より明るくそしておおらかな心持ちになる。なんだかイーライみたいだ。

 というわけで、暫定ながら彼をイーライ(仮名)と呼ぶことにした。これには奥さんも賛成してくれた。

 当時、イーライ・カメイに語らせている時、僕は心の中で彼に語りかけたものだ。

 「ねえイーライ・カメイ、日本じゃあなたの話してる言葉を宇宙語っていうらしいよ。なんだか軽くて嫌だねぇ」

 しかしイーライ・カメイは、淡々と異言を繰り出すだけである。

 明るくておおらかで聡明な彼は、そんなこときっとどうでもいいと思っているに違いない。

 ところでこの異言、あるいは宇宙語は、ヨーガの世界には存在するのだろうか?

 いつかたか先生に訊いてみたいと思っている。